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『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.17
 チャプター6 〔仕上げ 3〕

いよいよ最終章となりました。約半年にわたって連載してまいりましたが、お役に立てたでしょうか? もう少しです。最後までお付き合いください。

《1時間15分00秒〜1時間15分35秒》
バックは繋がった空間です。ただの余りではありません。大半の初心者の方は、まずモノを描き終わってから「さぁ、あとはバックを塗っておしまい」とばかりにバックを一気に塗って仕上げます。以前にも書きましたが、バックはとても重要な脇役ですからモノを描き進めるときに一緒に進めていくことをお勧めします。先にモノができてしまったあとでバックをあとから塗ることは、実はとても難しい事なのです。なぜなら、バックなしで描き進めたモノたちは、白バックに合わせて描かれているので、あとから急にバックを変えてしまうとモノとバックがかけ離れたものになる恐れが大きいからです。遠くのモノを薄くして白バックに溶け込ませていたのに、急にバックを暗く(濃く)したら遠くのモノはどうなるでしょうか? ちょっと考えてみてください。

《1時間16分58秒〜1時間17分27秒》
最後にさらに遠くから客観的に見て、直すべきところを確認します。この行為は何度やっても多すぎることがありません。その都度何かを感じるはずです。そして、ストップをかけるのも自分です。ここで辞めるのか、手を加えるのかを判断することが水彩画の場合特に大事だと思います。途中でも言っていましたが「一歩手前」というのが水彩画の“止め時”だと思います。でも、この一歩手前で止めることがどれだけ大変なことか、絵を描いている方ならよくお分かりだと思います。
永山流 水彩画法

《1時間17分37秒〜1時間18分02秒》
具体的な直しのポイントを瞬時に判断し的確に説明してくれていますね。これができるのが永山さんの凄さなんだと思います。ここらあたりで、たいがいの方はどうしていいかわからなくなって“先生に聞く”か“描きすぎが怖いので止める”のどちらかを選択するんだと思います。何も考えず時間まで描き続けるのは問題外です。本当に正しい行動は、よく吟味して自分なりの判断をした上で描き加えるか止めるかの判断をすることです。仮に失敗してもそれが一番勉強になるし、身に着くと思います

《1時間18分04秒〜1時間19分45秒》
白と黒についてのお話ですね。これは、透明水彩の最も特徴的で最も重要なテーマだと思います。透明水彩の白と黒については様々な意見があると思います。基本的にやってはいけないことはないと思います。ただ一つ言えるのは、透明水彩絵の具を使う以上、透明水彩でしかできない表現をしたいですねということです。白のガッシュを使うことも効果的であれば積極的に使っていくべきだと思いますし、黒をきれいに見せられたら魅力的な作品に仕上がるでしょう。せっかく透明水彩という興味深い素材を使うのですから、別の素材で描いたようではつまらないかな…ということかな。永山さんは紙の白とガッシュの白を“別の色”として使っていますね。それはさらに高度な次元での判断があってのことだと思います。
永山流 水彩画法


《1時間21分56秒〜FINISH》
ここから永山さんの筆は急に大胆に画面全体を行ったり来たりしたと思うと、細かいところを繊細に描き加えるという具合で激しく動き回ります。これは、“最後の全体調整”をしているのでしょう。この時、筆だけでなく目も画面の上をくまなく眺めまわしているはずです。全体を見渡して感じたことをディテールから全体イメージまでチェックし絵としての完成に向けて一気に上りつめていくところです。そして、「ここまで!」という判断の下、完成となります。今回は、時間の限られたDVDということでサインまで入れていただきましたが、本来は、数時間後または翌日見直して良ければ完成としてサインを入れる、悪ければさらに描き加えるというプロセスがあることをお伝えして、終わります。
永山流 水彩画法


今回で第一弾“永山裕子 薔薇を描く”の独断と偏見に満ちた解説を終わります。少しでも皆さんの上達のお手伝いができたのであればうれしいです。永山さん、勝手な解説、ごめんなさい。こんな勝手を容認してくれた永山さんに改めて感謝しています。
長期間ご愛読いただきましてありがとうございました。

| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 12:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.16
 チャプター6 〔仕上げ 2〕

《1時間09分08秒〜1時間10分42秒》
9分08秒、私の声を消し忘れていることを見つけてしまいました。以前から生徒さんに「笠井先生の声が入ってますよ。」と言われてはいたんですが…。(苦笑)さて、ここはとても大事なことをお話しています。輪郭については前回も書きましたが、今回はより具体的な例をあげながらわかりやすく説明してます。周りの葉や奥まった暗い部分を描くことでバラの花を浮き上がらせる、いわゆる“ネガティヴ・ペインティング(塗り残し)”技法をより高度に使いこなすコツがここにあります。輪郭すべてをハッキリ、クッキリさせるのではなく、光のあたっている側はクッキリとして、陰(影)の中は弱くあいまいにした方が自然で“空気”や“光”を感じ、モノが“在る”ことを表現できるということだと思います。実際、そう見えていると思います。
永山流 水彩画法

《1時間10分56秒〜1時間11分24秒》
「透明水彩絵の具は、重ねれば重ねるほど透明感が出る」と言っていますね。ここは私はちょっと見解が違います。それは、簡単に言うと「それは永山さんだから」ということです。ふつうは重ねすぎて濁る場合の方が圧倒的に多いのが実際です。では、なぜ永山さんは重ねるほど透明感が出るのか。一つには、完全に乾いた上に重ねているということ。決して生乾きの上に次の色は置いていません。さらに決定的なことは、抜群のバルール(「色価」と訳される)感覚で描かれていることだと思います。永山さんは、「濁った色も“色”だから」と言っている通り、正しい色を正しい場所に置いていくことですべての色がいきいきとしてくるわけで、これは凡人にはできないことだと思います。卓越したデッサン力と色彩感覚を駆使して実現するものだから。

《1時間12分07秒〜1時間12分45秒》
自分の絵を客観的に見て“何をすべきか”判断することがいかに大事で、いかに難しいか。実は描ける人ほど客観的に見ることを大事に考えています。経験が浅い人は描くことに一生懸命で客観的に見る余裕がありません。ちょっと離れてみたり、さかさまにしてみたり、鏡に映してみたり、写メで撮ってみたり…そういう客観的な“目”を持つことがいかに大切かを永山さんは教えてくれています。今回は限られた時間の中での収録なので描き続けてもらいましたが、本当は、しょっちゅう立ち上がって離れて見たかったに違いありません。私も、絵の仕上げ近くになると止め時の判断も含め客観的に見る時間が長くなります。後半は、描いている時間より見ている時間の方が長かったりします。
永山流 水彩画法

《1時間12分55秒〜1時間13分21秒》
ここもさりげなく過ぎていきますが、大変高度な判断があるように思います。「ここの眩しい光がきれいなので、あえてこの辺は輪郭をつぶしちゃいます。」なぜ光がきれいな事とお皿の輪郭をつぶす事が関係あるのか。この判断をどう見ましたか? 
私は、先ほども出てきたとおり光の当たっているところはハッキリ、クッキリ、陰(影)の中は輪郭があいまいで鈍いということだと思います。皿の前の輪郭を弱めることで奥に当たった光をより印象的に見せる計算があるのだと思います。

《1時間14分05秒〜1時間15分00秒》
この左下の白い空きは画面全体からみると“貴重な白”として残しておきたいところです。全体に色が満遍なく塗り込まれた絵も密度があっていい場合があり、一概に言えませんが、この場合左下の白は“息抜き”としても画面全体の緊張感を和らげる大事な役割を担っている気がします。それをただの紙白で残すのでなく、目地の線だけ入れてタイルの質感を出そうというわけです。何も塗っていない紙白が存在感のあるモノとして見えてくることは、水彩画の一つの大きな魅力ですよね。
永山流 水彩画法


つづく
| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 15:57 | comments(1) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.15
 チャプター6 〔仕上げ 1〕

《1時間03分35秒〜1時間04分36秒》
さぁ、終盤にさしかかってきました。フィニッシュに向けての客観的な姿勢が、永山さんの言葉や所作から感じることができると思います。『一歩手前で止める』永山さんの口調も一段と強くなっていますよね。簡単なことのようでこれがとても難しいことだと永山さん自信が強く感じている証拠でしょう。実際に“描き足りない”と“描き過ぎ”の間に必ずあるはずの“調度いい”ところを察知する完璧な客観性が持てたらと、よく思います。ゴルフで言えば“砲台グリーンの頂上に切られたカップにチップインで入れるようなもの”かな?

《1時間04分37秒〜1時間04分49秒》
何も説明がないので見過ごしがちですが、このタイミングで薔薇にスプラッタリング(またはドロッピング)を施していますね。しかもピンクの薔薇の中心辺りにトランスルーセントオレンジをピッピッと。なぜ??? でも結果を見るとうなづかざるをえません。花の中心から放たれる芳香であり、花粉であり、花の中の空間であり、生命力そのものだったり。このピッピッがもたらす効果は絶大です。ここら辺にも“永山マジック”がよく表れていると思います。
永山流 水彩画法

《1時間05分00秒〜1時間07分02秒》
さきほども書いた通り、客観性を保つのは容易ではありません。まだ小さい画面(F6号位まで)だったら客観的に見ることはさほど難儀ではありませんが、F8号を超えると描いている画面が両目の視界から出てしまう(いっぺんに端から端が見えない)ので、離れてみることが必要になってきます。デジカメで撮って見るのもいいですね。ただ、デジカメの画面で見ると密度が上がってよく見えたりするので、別な意味で客観性をもって、ぬか喜びしないで厳しく自分を見つめることも必要になってきます。逆に、自信のない時はデジカメで撮って悦に浸り、それをきっかけにスランプ脱出もいいでしょう(笑)。

《1時間07分06秒〜1時間07分44秒》
ここでも“永山マジック”の真髄が出てきます。『しみや模様はぜんぜん問題にしていません。』この件はまさに“永山流”。DVDの付録リーフレットに書かれている永山さんの言葉を思い出してください。(以下引用)水のおもむくままに、絵の具のおもむくままに、紙ですらも季節を感じ取りながら、ゆっくりと、時に風の力を借りてすばやく乾く。にじみやぼかしは、そうした自然に起きる力の結果であり、それを生かしながら筆を入れていく。これが水彩画の魅力だと思います。(以上引用終)まさに、その通り。感服。
永山流 水彩画法

《1時間08分23秒〜1時間08分54秒》
光は大概の場合、上から降り注ぎますね。下から光が来るのはドガの「踊り子」のような舞台とか建築のライトアップのような特別な状況しかありません。上から光が射すということは単純に言えば、上を向いた面が明るくなり、下を向いた面が暗くなるということです。この洋梨の場合もそうですが、上を向いた面に光が当たり、その後ろに洋梨の“陰”の部分があるので前の洋梨の輪郭はクッキリハッキリします。また洋梨の下半分は下を向いた面なので暗く、さらに自身の“影”の中に入るので光が少なく薄暗いため、下半分の輪郭は弱くなる(あるいは見えない場合も)わけです。みなさん、見えないところまで“よく見て”クッキリと輪郭を浮き上がらせたいようですが、実は“よく見る”と輪郭はすごくハッキリしたり、ぜんぜん見えなかったりしているものです。それが“自然”なのだと思います。
永山流 水彩画法

つづく
| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 10:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.14
チャプター5 〔細部描写 2〕

《56分59秒〜57分06秒》
一瞬です。ダリアの花びらを描くときの筆使いをよく見てください。このDVDの中でも何度か出てきたと思いますが、永山さんは筆の使い方が実に多様です。他の水彩画の先生方も、私も含めてこんなに筆使いのバリエーションがある作家はいないのではないでしょうか。永山さんを見ていると、水彩画は“絵具を筆で塗る”のではなく“絵具を画面に置く”ものという風に見えます。決して塗りたくってはいませんよね。このDVDを見ればわかるはずです。
永山流水彩画法

《57分07秒〜58分59秒》
『水彩画は修正できないので難しい』とよく言われます。確かにその通りです。一度塗ってしまったらもう紙の白は戻ってきません。そこのところを肝に銘じておいてこの“激落ちくん”の活用シーンを見ていただきたいと思います。永山さんも言うとおり、消しゴムではないのですから、「これがあれば安心」とばかりにガンガン描いてゴシゴシ消していると決して水彩画らしい絵にはなりませんよ。
マスキングも別な意味で使いすぎ要注意です。どちらも“やむをえない時”に限って使うといいと思います。永山流 水彩画法

《59分00秒〜1時間00分05秒》
“激落ちくん”使用が効果的で紙にも影響が少ないのはアルシュ(フランス製)だけということも覚えておいてください。他の紙だとちょっと濡らしすぎたり、擦りすぎたりするとすぐにボロボロになってしまいます。ちなみに、ホワイトワトソンやキャンソンはティッシュでもある程度消えます。しかし、ワットマンはティッシュでも落ちませんし、“激落ちくん”では見事にボロボロになります。さらにワットマンは、マスキングが剥がせなくなるので、注意が必要です。紙は色、タッチ、にじみ、ぼかしなどにたいへん影響があり、絵の風合いに多大な違いが出てきます。
私は、絵具より、筆より、画材の中で紙が一番仕上がりに影響すると思っています。“腕”が一番影響力があることは敢えて割愛します(笑)。永山さんのように、時にはわざと使い慣れない紙で描いてみて、思わぬ効果を体感してみるのも大事なことですね。
永山流 水彩画法

《1時間00分52秒〜1時間03分15秒》
『いつ止めるのか』『どこまで描くのか』これは非常に大事なお話です。私も同じですが、『“主役”がやや先行し、“脇役”が様子を見ながらあとを追いかける』これが一番いい方法だと思います。その順番が狂うと自分が何を描きたかったのか、何を表したかったのかがわからなくなったりします。“脇役”が引っ込みすぎても“主役”が浮いてしまうので、“主役”を喰う一歩手前がいいと永山さんも言っています。しかし、以前にも書いたとおり“主役をキッチリ描く”とは決して筆数を多くして描き込むことではなく、あくまでも、脇役やバックとの関係性の中で自然に目に留まり浮き出てくるように描くということです。描きすぎて汚れた“主役”は決してその役を
果たせないですから。

つづく

| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 12:21 | comments(5) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.13
チャプター5 〔細部描写 1〕

《51分56秒〜52分16秒》
マスキングを取る時、永山さんは指で取っていますが、私は必ずリムーバー(クリーナー)を使うようにしています。ちょっとした失敗があったからです。沖縄竹富島に仕事で行ってスケッチした時、あの瓦屋根の漆喰のつなぎ部分が特徴的だったので、全部マスキングしておいたのです。7割方描いてマスキングを取る段になりリムーバーを忘れたことに気がつきました。それで指で取っていると指先がヒリヒリしてきたので見てみると、なんと、人差し指、中指の皮が水ぶくれ状態になっているではありませんか!あとで気がついたのですが、(1)暑いので汗をかいて摩擦が大きくなっていたこと。(2)直射日光で紙も熱くなっていたこと。(3)表面がやすりのようなアルシュの粗目だったこと。これらの条件が重なって起きた惨事でした。皆さんも気をつけて。
永山流水彩画法


[竹富島で描いた絵]

《52分50秒〜54分23秒》
ガラスの特徴を見つけ出すことが大事です。それはガラスに限ったことではありません。対象をよく観察し、そのモノならではの特徴的なことを見つけて描いていくわけです。答えは一つではありません。見る人ごとに見つけるものは微妙に違うはずですから、自分なりによく見ることが大切です。よく、「ガラスの描き方を教えてください」という生徒さんがいますが、私は「描き方はありません。よく見て描いてください。」といいます。そこには“見方”はあっても“描き方”はないのだと思います。描き方は見つけたものによって変わってくるし、その人の見つけたものはその人の描き方で描くべきだと思うからです。永山さんの描き方、私の描き方、みんな違うから面白いんですよね!
永山流 水彩画法

《54分24秒〜54分58秒》
水の入ったガラスの屈折はとても面白いですね。あと、ぴかぴかに磨いた金属のポットとか。ガラスや光沢のある金属を敬遠する方がいますが、私は、「写っているものや屈折して曲がっているものを探して描けば、自然にガラスや金属の質感になりますよ」と言います。「そうは仰いますけど、、、」と言う声が聞こえてくるようですが、お花や布のような有機的な形ものより、金属やガラスといった無機質でつやのあるものの方がハッキリしていて描き易いと思うのですが。いずれにしても、観察力、洞察力をフルに使って対象を“知る”事が大切です。
永山流 水彩画法

《55分05秒〜56分10秒》
このヘリオターコイズは私も好きでよく使います。私は、単調になった絵にアクセントをつけたり、陰の中に入れて微妙な反射光を感じたりする時につっています。それにしても、色の説明のために別の紙でなく画面の端に塗っていますね。私はこの時「なんでそこに!?」と、驚きましたが、見ていると色の説明のために置いたヘリオターコイズが自然と絵の一部として溶け込んでいくではありませんか。この辺にこの色を決めていたかどうかはわかりませんが、結果、とても効果的なバックの色になっていますね。さすが。
永山流 水彩画法

《56分32秒〜56分52秒》
花瓶の輪郭について、私は「花瓶の輪郭はそんなに強くないですよ。」と言います。光の加減で強いときもありますが、大概の場合、花瓶と花を比べると花瓶は花や葉っぱの陰に入っているので暗くあまりハッキリしていません。永山さんもガラスの花瓶の輪郭は薔薇の輪郭に比べてかなり弱く描いていますよね。実際、そう見えているでしょうし、そう描く事によって花がより目立ってくることも計算に入れているはずです。

つづく

| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 19:41 | comments(2) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.12
チャプター4 〔貴重な白8〕
 
《48分26秒〜49分10秒》
またまた出てきました。絵を描くときのイメージの大切さ。「私はこういう絵を描きたい!」「こんな絵を飾りたい!」という具体的なイメージを持って描き始めることの大切さを、永山さんは何度も何度も繰り返し言っています。途中で変わってもいい、イメージを持って描くことが大事なんだと。私も生徒さんに同じことを言っています。『モチーフはあなたの絵を描くための参考においてあるだけなんだから、そのものを観察し、よく知ることは大事だけど、イメージもなく“写し取る”だけじゃつまらないですよ』と。モチーフを観ることから出てくる絵の完成イメージをしっかりと意識してその方向に向かって進めていくことが大切だと思います。
 
《49分10秒〜49分30秒》
前回もでてきた“曖昧にする”行程がここでも効果的です。薔薇の花の影の部分をさらに曖昧にして引っ込めています。それによって光のあたっている部分がより光って飛び出してきますね。ここでは永山さんの解説は一切ありませんので、サラリとパスしそうですが、よく見るといろいろ学ぶべきところがあるんですよ。
永山流 水彩画法

《49分31秒〜51分12秒》
これは非常に重要なお話です。主役をいかにして主役らしく見せるか。ただ手数をかけて描き込んでは逆効果であることは前回書きました。むしろ逆で、主役ほど手をかけない方がきれいだとも書きました。描いていないものがなぜ際立って主役の座に座れるのか。それを説明してくれています。重要なのは“コントラスト”。真っ白な紙のままの花びらの横にある葉が暗ければ強いコントラストが生まれます。それ以外にはそれほど強いコントラストが出てこないようにコントロールすれば、見る人の目はコントラストの強いところに引き寄せられるというわけです。

★★ワンポイント★★
白バックのままでモチーフを描き上げてから、「バックを暗くしたい」という方がいます。最初から決めていたそうです。
そういう時「今からバックを暗くするのはやめたほうがいいですよ」と言います。なぜなら、すでに描かれたモチーフは白のバックに合わせて描いているはずだからです。奥にあるものは白バックとコントラストが強くならないように薄く描いているはずです。そこにあとから暗いバックを塗りこんでいったら、薄く描いたモチーフは確実に飛び出してきます。最初から決めていたのなら最初からバックを暗くしながらモチーフを描いていくべきでした。
奥は薄いのか、暗いのかについては、以前「気付きの水彩日誌」でも“遠くは薄いの?暗いの?”というテーマで書きましたが、一つのヒントが今回の“コントラスト”のお話にあるのではないかと私は思いました。
 
つづく
| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 18:31 | comments(0) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.11
チャプター4 〔貴重な白7〕
 
《45分44秒〜46分48秒》
“永山流”のとても重要な技法が施されている部分だと思います。普通皆さんは、しっかりと物の姿を現わすことに力を集中させますよね。でも、「永山さんは違う」ということがここでわかります。そうです、ここでやっていることは物の姿を“曖昧に”“わからなく”しているのです。形がはっきりしている水差しのところに絵具を垂らし、それを広げて形を曖昧にして奥に引っ込めたり存在感をなくしたりしています。主役のばらを引き立たせるための脇役作りをしているとも言えます。全体の構成を考えながら「この水差しは目立たなくていい」という判断から、一度描きかけた輪郭を消す作業に変更したのだと思います。描かないという判断が大事なのです。
永山流 水彩画法
 
《46分50秒〜47分34秒》
ここは色のつながりの解説としてサラリと過ぎていくので見落としがちですが、一度描いた花の陰の中を曖昧にしたりしています。下の器の影に使った色(ターコイズ)を薔薇の花の陰の部分にも関連付けて使いながら、影の中のコントラストを弱め曖昧さを作ることで光の当たった花びらを引き立たせるようにしているのだと思います。このコントラストの強弱や輪郭の有無を完璧にコントロールしていくことが“永山流”のもう一つの奥義だと、私は思っています。
 
《48分12秒前後》
ぼかした水差しの上に、ダリアに使ったオレンジ色をドロッピングしています。Vol.9でも触れていますが、この水差しが奥のほうにあることを強調するためにその前に“空間”を感じさせたかったのではないでしょうか?いつも画面全体に意識が行き届き、まっ平らな画面の中にゆったりとした“奥行き”を感じていることがわかります。
 
《47分38秒〜48分27秒》
『ダリアが大きすぎるので縮めながら描いていきます』といいながら、花自体には手をつけずバックから攻めてダリアのギザギザした形を浮き上がらせていきます。ここでも“ネガティブ・ペインティング”の技法がふんだんに出てきましたね。花を描くと言いながらバックを描いているわけです。
永山流 水彩画法
 
■■■エピソード■■■
ネガティブペインティングについて
先日第2弾の撮影の時に永山さんと私でこんな話がありました。笠井『「紙の白に一度だけ塗った色が一番きれい」ということと、「主役はしっかり描く」ということと矛盾しない?しっかり描いたら絵具は何重にも重なって濁ってしまいますよね?』永山『私の究極の理想は「主役は手をつけずに主役にするということ。難しくて私にはできないけど』(笑)笠井『カサブランカの花びらには一切触れず、バックと葉とシベだけ描いて立派に咲かせたいものですね。』このやりとりから透明水彩のネガティブ・ペインティングが少し理解していただけるのではないでしょうか。
 
| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 10:10 | comments(2) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.10
チャプター4 〔貴重な白 6〕
 
この章は透明水彩の特徴である塗り残し(ネガティブ・ペインティング)技法が随所に出てきます。紙の白に近いところにはなに色でも乗せることができますが、濃い色(強い色、暗い色)に明るい色は乗せられませんね。そのため、透明水彩では明るいところを塗り残す必要があります。これって、当たり前のようでいて意外とみなさん忘れてしまうところなで、じっくり研究してみてください。
 
《42分34秒〜43分08秒》
マスキングは、筆では塗り残しづらいところをカバーしておいて、あとで剥がして紙白を塗り残すわけですが、なんでもかんでも明るいところすべてにマスキングを塗って安心してしまっている方を見かけます。しかし、マスキング液を使った白は筆で塗り残した白とはタッチが違うのですぐわかります。できれば筆で塗り残すように心がけ、どうしても塗り残せない細い線や複雑な図柄などに最小限度で使用するのが望ましいと思います。今回の場合、永山さんはガラスの反射はマスクしていますが、水面はマスクしていません。
私もそうすると思います。なぜなら、ガラスは細く複雑な形の反射で塗り残しずらく、水面は比較的広くシンプルな形で筆でも塗り残せるからです。

《43分09秒〜43分31秒》
『画面全体を意識しながら描き進める。』 これはとても大切なことでありながら、初心者ほど忘れてしまうことなのではないですか?
よく教室で見かけるのですが、朝来てモチーフの前に座って描き始め、トイレ以外は一度も席を立たず描き続け、そのまま講評を受ける人。それでは全体を意識しているとはいえませんね。画面全体に意識のいってる人ほど全体のバランスをチェックしないと安心して進められないので、絵を遠くから見たり、逆さまにしてみたり、鏡越しに見たりと“客観的に突き放してみる工夫”をするものです。
みなさんはいかがですか?
永山流 水彩画法

《43分50秒〜43分56秒》
バックを塗りながらダリアのギザギザな輪郭を塗り残していきます。油絵具やアクリル絵具のような不透明絵具でしたらバックを塗っておいてあとから明るい色や派手な色で花びらを描いていけばいいわけですが、先にも述べたように透明水彩では明るい色、派手な色が乗らないので、周りを描くときに塗り残して浮き上がらせることが必要になります。この塗り残し(ネガティブ・ペインティング)が水彩画特有の色面を作り出します。
 
《44分20秒〜45分05秒》
永山さんの平筆の使い方はたいへん参考になります。平筆には平らな面もあり、角もあり、直線もあるので、それを上手く駆使できれば非常に便利な筆となります。「線を引く時なども平筆を使います」と言っていますね。要は、道具も使う人の工夫一つで生きも死にもする
ということですね。「弘法筆を選ばず」永山さんもいい筆ばかりではないようで、『筆遣いが乱暴なので、すぐ壊れるからいい筆だともったいない』とも言っています。これはとても意味深で、私には「筆の使い方は自由だから、自分のほしいタッチを得るためには何でもしますよ」と聞こえます。
永山流 水彩画法

 つづく
| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 18:45 | comments(1) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.9
チャプター4 〔貴重な白 5〕
 
《38分26秒〜40分29秒》
反射の話はVol.4でも出てきましたね。洋梨がお互いに反射し合ったり、テーブルやトレイにも影響している事を発見しないと描けませんね。私たちは日常生活の中ではそんな見方をしていませんので、意識して観察しないと見つからないと思います。反対に、絵を描くと今まで見えなかったものが見えるようになるとも言えます。 さらに飛躍して、実際に写りこんでいるかどうか怪しくても、色が見えたら描くべきですし、仮に見えなくても「いろんな色が写りこんでいるはずだ。」とか「あったらきれいだろうな。」と自分の判断で色を入れてみてもいいと思います。ちなみに、私は生徒さんに「白い花の陰に、グレーだけは使わないように。白は一番カラフル!」と言っています。なぜなら白は、写りこんだ色を一番正確に映し出すからです。映画やスライドは白い画面に映すときれいなのはご存知の通りです。
永山流 水彩画法
 
《40分35秒〜41分15秒》
「あくまでも絵ですから」 “そっくりに”“写真のように”描くことが目的ではなく、対象(モチーフ=材料)をよく見て、知り、咀嚼して自分の絵にすることが大切だと思います。写真に近づこうとしている限り、絵より写真の方が上ということになってしまいます。キュビズムやシュールレアリズムのような作品を目指すのでなく、あくまでも具象的な描写を目指すのであればデッサン力は必要ですし、物の形は正確に描けるに越したことはありません。ただ、“写真のように”描けることがデッサン力があるということではないと思います。写真と絵画の違いは、誤解を恐れずに一言で言えば、『絵画は作者の解釈の表出』であり、写真は『光学的(網膜的)画像の定着』なんじゃないかなぁと思います。もちろん、写真にも作者の解釈が反映することは言うまでもないですが、直接手を下す絵画の方がより作者の“生の声”が反映されるのでは
ないかと思います。
 
《41分19秒〜41分32秒》
「こっちの方(主役周辺)はこのままにして・・・」と言いながら、おもむろに洋梨などに使っていた色を洋梨周辺にピッピッピッと飛ばしてますね。スプラッタリング(またはドロッピング)と言いましたっけ。一度描いた上にお構いなしに飛ばしています。このタイミングでの絵具飛ばしが非常に興味深かったので、永山さんに聞いてみました。「どういう時に絵具を飛ばすんですか?」すると「あまり意識していないけど、馴染ませたい時かなぁ???」とのこと。描いてる本人はその時点ではあまり考えず感覚に任せてやっているようです。私も自分が描いている時の事を聞かれても的確に答えられないと思うので、よくわかります。でも、その後永山さんはその訳を自己分析してくれました。ここら辺が永山さんの優しさだと思います。先日撮影を終えたばかりの第二弾でしっかりと説明してくれていますので、今回は割愛しますが・・・。
 
《42分08秒〜42分30秒》
マスキングを取るタイミングですね。確かに私もそういう経験が少なからずあります。また、グレーや青のマスキングの色がとてもきれいに見える時があります。こういう時は十中八九、マスキングを取るとシラっとしてしまいます。マスキング液のタッチ(塗った形)はいかにも“マスキングしました!”というように白く残りますし、取りっぱなしだと不自然に目立つ場合が多いので、必ず八分完成くらいの時に取って上に絵具をかけるなり、白抜きの形を自然にするなりの修正が必要になってきます。「最後にマスキングを取って完成!」にしたい気持ちはよくわかるのですが、取りっぱなしでは目立ちすぎて絵がだいなしです。永山流 水彩画法
| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 10:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! Vol.8
チャプター4 〔貴重な白 4〕

この辺りが否応なしに永山裕子という人の非凡さを感じるところなのではないでしょうか?ほとんど手(筆)をつけないバラの花が、見る見る光を浴び生き生きと輝き出す過程を目の当たりにした時、「あーっ!」というため息とも歓声とも言えない驚きの声を自然に発していると思います。これが私たちが“永山流”と命名した所以です。

《35分14秒〜35分43秒》
ここでカメラが引くと驚きの光景が現れます。なんとすでにバラがきれいに浮かび上がって輝いているではありませんか!
さっきから葉っぱしか描いていないのは皆さんが見ていた通りです。私は現場にいましたが、編集でつないでいるわけではありませんし、料理番組のように時間をかけて描いたものと取り替えているわけでもありません。水彩画の技法でいう“Negative Painting”=“塗り残し技法”ですが、永山さんの塗り残し効果は尋常じゃないですね。バラの花自体には、中心からのトランスルーセントオレンジのグラデーションとザラザラした調子くらいしかありません。その周りに濃度のある葉っぱを描くと、いきなりバラの花が浮び上がってきます。ここが、このDVDの最初の見せ場と言えるかもしれませんね。
永山流 水彩画法


《36分28秒〜37分18秒》
補色(逆の色)を混ぜ合わせると彩度(鮮やかさ)は極度になくなり、濁った色(場合によってはグレー)になります。こうしてできた色は、言葉で言い表せない「これ、何色?」というようなとても微妙な調子になり、影の色としても使えますし、今回のような錆びた金属などのように時間の経過を感じさせる色としても使えます。ただ、使いすぎると全体に濁った印象になりやすいので気をつけてください。また、以前、“気付き”の水彩日誌Vol.1 『混ざらない絵具』で書いた“沈殿する絵具”の効果についても触れていますね。混ぜた色が紙の上で分離する効果はとても面白いので、私もよく使っています。
永山流 水彩画法


《37分20秒〜38分08秒》
前にも出てきた「自然の力、偶然の力」について、私以上に永山さんがこだわり楽しんでいることがよくわかります。そして、バラの葉を絵具の特性を利用して描くという裏技まで披露してくれるとは・・・。誰に教わったのでもなく、自分で見つけて検証し技法として身につけた貴重なノウハウを惜しげもなく見せてくれるなんて、なんとオープンなんでしょう!永山さんが言っていた言葉を思い出します。『水彩画については隠すことは何もないんです。すべてさらけ出しても大丈夫。』と。この開放的な姿勢はどこから来るのか?
私が推測するに(本人は否定するでしょうが)、圧倒的な自信があるからだと思います。そうそう、以前こんなことも言っていました。『DVDですべて出して追いつかれるかもしれないけど、反対に頑張らなきゃと思うので、自分を追い込む意味もあるかもしれません。』 脱帽。

つづく

| 『永山流 水彩画法』を10倍楽しんでください! | 13:34 | comments(2) | trackbacks(0) |

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